■ "古いエアコンを買い換えれば省エネ"と言われてるけど、それってホントなの?
8月に入り、気温は30℃を越える暑い日が続く。この暑さで冷房需要が増えたためだろうか、電力会社の需給状況が厳しくなる地域も多くなった。夏はこれからが本番だが、節電対策もいよいよ本番といったところかもしれない。
ところで、暑さが本格的になる前からいち早くエアコンの節電方法を取り上げていたのが、ダイキン工業だ。実際の生活環境における節電テクニックの数々を専用のホームページに開設するなど、空調専門メーカーならではの「無理せず賢い節電術」を分かりやすく解説している。
しかし疑問がひとつ残る。それは節電へのアプローチだ。細々とした節電テクニックを駆使する方法も確かにあるが、エアコンは年々省エネ性が進化しており、古いエアコンはいっそ買い換えたほうが劇的に節電できるのでは? とも思ってしまう。
古いエアコンを新しいエアコンに買い換えると、どれだけ節電になるのか。また、エアコンのどの部分が省エネ化されているのか。この疑問に答えてもらうべく、ダイキン工業の滋賀工場を訪れ、実際にエアコンの製造に携わる技術者の方々に話を伺った。
■ 2005年以前のエアコンとの買い替えるだけで、15%の節電に!
エンジニアの方に話を伺う前に、まずはエアコンがどのようにして部屋を冷房するのか、という基本的な仕組みを確認しておこう。
なぜエアコンで部屋が冷やせるかというと、エアコン室内機の中にある、薄いアルミ板が何百枚も重なった「熱交換器」という冷たいパーツに風を当てて、冷風を出すからだ。 では、どうして熱交換器が冷たくなるのか。まずは、熱交換器の内部にある「冷媒管」という管の中にある液体状のガス(冷媒)が、急激に気体化することで温度が下がり、熱交換器が冷える。これは、液体が蒸発して気体になったとき、周囲の熱を奪う「気化熱」と同じ現象が起きているため。スプレー缶を長時間噴射したときに、缶がキンキンに冷えるのと同じだ。
この熱交換器を冷やす作業を繰り返し循環する装置が、「コンプレッサー(圧縮機)」という装置。室内機の熱交換器に冷気を移したガスは、コンプレッサーで圧縮され、高温・高圧の状態となるが、今度は室外機側の熱交換器で熱を放出し、再び液体になる。この液体を急激に気体化することで、室内機の熱交換機が冷え、そして気体となった冷媒を再びコンプレッサーで圧縮する……これを繰り返して行なうのが、エアコンの冷房の仕組みだ。
このサイクルの中で、もっとも消費電力を使うのがコンプレッサーである。空調生産本部 商品開発グループの山本基久雄氏も、「エアコン全体の消費電力を100%とすると、その89%がコンプレッサーで消費されている」と話す。 「エアコンの消費電力分布のグラフを見ていただきたいのですが(下段左の写真)、フルパワー運転では、コンプレッサーはエアコン全体の89%の電力を消費していますが、室温が下がり、アイドル状態(使われていない状態)に近くても、全体の76%の電力を消費しています。つまりコンプレッサーを省エネ化することが、効果的に消費電力を抑えられるというわけです。
そこで私たちは、1995年から、それまで使っていたコンプレッサーを改良し、ダイキン独自のものに変更しました。またコンプレッサーの動力源となるモーターをはじめ、過去20年間に色々な工夫をしてきました」(山本氏)
右のグラフは、14畳向けクラス(4.0kW)の同社エアコンの期間消費電力量(冷房・暖房期間を合わせた消費電力量の目安)を表した年表だ。これを見ると、1994年と1995年の間で、ガクンと消費電力が落ちている。消費電力の多いコンプレッサーから省電力化に着手し、そこから細かい部分へ改良を加え、年々省エネ化を図ってきたことが分かる。
「さまざまな改良や技術革新の結果、14畳向けエアコンの期間消費電力量は、1991年には3,394kWhだったものが、2011年にほぼ1/3(約37%)の1,252kWhにまで抑えられるようになりました」(山本氏)
分かりやすく電気代に換算してみれば、1991年では年間7万4,668円かかっていたものが、2011年モデルなら年間2万7,544円まで安くなったということだ。
■一番電気を使う「コンプレッサー」の節電には、ダイキン独自の"スイング方式"が効果
エアコン全体としての省エネ性能が向上してきたのは、山本氏の説明で分かった。しかし、山本氏が言う"さまざまな改良"や"技術革新"とは、具体的には一体何のことだろうか? ここからは、エアコン内部の各パーツでどんな進化があり、省電力・高効率化を進めてきたのかを、細かく見ていこう。なお、ここで触れる最新形のエアコンとは、基本的に2011年モデルの「Rシリーズ」としている。
まずは、メインパーツとなるコンプレッサーだ。先ほどの山本氏の話では、コンプレッサーの消費電力が大きく、これを改良することで省エネ化したということはわかったが、それは果たしてどのような改良だったのか。
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